生人形展

 夕方、歴史博物館の生人形展に行く。ちょうど集中講義に来ていたベルントさんの学生たちと合流し、あれこれ見てまわる。
 ひとつひとつの人形の写実性云々はさておき、展示がもう少し元々の設定の中に置かれていれば、面白いことになっていたかもしれない。引き札などの図を見ていると、生人形は単体で展示されていたというよりは、蝋人形のタブローのように浅い奥行きのある舞台の中で設置され、傍らでの口上とともに観客の関心を惹いていたにちがいないからである。ストーリーを画像そのものが語るというよりは、目立った場面をピックアップし、そのスチルを複数見せるという見せ方、これは初期映画にもつながる呈示の仕方なのである。もちろん運動と静止という違いはあるが。学生と話していると演劇の検閲コードなどもここには絡んでくるような気がする。これと同時に大衆的演劇とブルジョワ演劇という差異も考えなければならない。もちろん美術の外にあるものが一方で美術に影響を及ぼし、他方で人類学的標本という差異の視覚化、マネキンという商品の差異の視覚化にまで作用を及ぼしているという話もできてしまう。人形へのフェティッシュなのめり込みとも彫刻への美的距離化とも異なる姿勢を誘発する面白い素材、そんな感想を抱いた。

 展覧会は4日まで。