彫刻写真と地上の星

 論文集『彫刻と写真』からジョエル・スナイダー「19世紀の彫刻写真と代替の修辞」を読む。19世紀半ばから彫刻を撮影する際のアングルや照明が画一化し、撮影者を透明な存在にすると同時に写真をも透明なものにした経過がおさえられている。ただし、肝心のトルボットのパトロクロスの彫像写真についてはいまひとつ煮えきらず。
 『History of Photography』誌からトルボット研究の第一人者ラリー・シャーフの論考「Art,Science and Talent」を読む。ちなみにこれはだいぶ前にサイトで報告した「Retracing the Image」というシンポジウムの特集号。シャーフは、トルボットとヒル&アダムソンの出自と才能の共通点と差異を明瞭にする。さしずめ科学の人と芸術の人の才能の違いということ。彼の議論は事実的確認が細かくてそれなりに面白いのではあるが、往々にして「困難が生じてそれに立ち向かい克服した」とか「しだいに洗練されて」とか「残念ながらこうした方向へは向かうことがなかった」いうストーリーが頻繁に紡がれる。何か『プロジェクトX』的で『地上の星』が流れてきそうではある。いちおうおさえる。ともかく発展=現像に抗する反復/コンタクトが基本的な筋になりそうかもしれない。

 そういえば、彫刻と写真について資料を集めていた。できれば今年には彫刻写真論を書きたいとふと思う。ひねりだけ浮かんでいる。