パノラマと菊人形


 ケンプの論をまとめる。彼の議論の要点はパノラマというメディアが社会的モデルネと文化的モデルネの葛藤の中継地点にあり、しかも必ずしも両者の幸運な宥和をもたらしたわけではなく、臨界点に達する手前にとどまった芸術と産業との歪な混成物であったということ、そしてそのことが近代の芸術のネガになってしまっているということである。とくにパノラマ製作工程における「純粋な(たんなる)目への還元/純粋な(単なる)手への還元と両者の分離」についての記述が興味深い。

 パノラマの制作工程についてさらに細かな資料を漁る。
下絵準備から、カンバスの設置を経て、下絵の写しにいたるまでの作業工程を段階的にまとめておくことにする。エッターマンから手を着ける。


授業の一環としてひらかた大菊人形展に行こうかと思う。今年で最後となるらしい。
http://www.hirakatapark.co.jp/newsnews/newsnews.html
こうした人形展はパノラマと間接的な関係がある。
パノラマ館のパノラマ画とプラットフォームとの間の「false terrain」には、しばしば立体的なセットが組まれていて、人形はそのなかでも重要な役割を果たしていた。その人形等の配置は後方のカンバスに視線を断絶なしに繋ぐように工夫され、そうした工夫がジオラマ(ディオラマではない)の展示空間や蝋人形館の展示空間につながっていくからである。

 それにしても、この一世紀ほど続いた人形展終了もそうだが、ここのところの関西の遊園地閉園ラッシュは凄まじい。…関西の遊園地は、鉄道と娯楽施設(と球団や球場)が密に結びついた稀有な複合的対象であることは確か。橋爪本を流し読みする。

日本の遊園地 (講談社現代新書)

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