かわいい異論

■かわいい/キッチュ
 ルードヴィッヒ・ギースの『キッチュ現象学』を読む。なつかしい文献。
 現象学的な観点から、享受を純粋享受と美的享受に区別し、その間に位置づけられる錯綜した享受のありかたをキッチュ的な享受として記述した書。
 『「かわいい」論』を読んでいるとそこには刺激的な素材が散見されるものの、肝心の「かわいい」が対象の特性であるのか、それとも主観的状態であるのかについてはいささか曖昧なままにとどまっている感じもある――それは新書だからやむをえないこともある。
 かわいいとキッチュはいくつかの共通点をもつ。快不快の感情がそのままではなく折り返されている。ただかわいいとかという充足し充溢したかわいい体験はむしろ古典的なものであり、現在のかわいいには有効ではないのではないか。なおかつキッチュ的享受は少し変換を施して現在考えないとならないのではないか。・・・そんな関心から古い文献ながらこれを読む。もちろん非歴史性は否めない。
 ともかくかわいい講義は1,5回分に膨らみつつある。