学会

 美学会に後半から行く。秋庭氏の「類似概念の実効性について」。
 終わって駅前でひたすら飲む。IさんとKさんとホテルのバーで深夜まで。

…発表そのものは面白かった。旧来の科学が前提としている背後の枠組みと美術史学のそれとが、どちらも神学的、本質主義的な種を前提にしており、その根源である科学における種の概念を進化論的にずらしてしまう議論を参照しつつ、それを芸術の学にもちこもうという話。類似性から同一性へいたるのではなく、類似性を有効なツールとして用いる。

 ただし、複製、歴史、起源の非設定という提案は、実は視覚文化を考えるうえでは基本になっていると思う。だから上の枠組みをどのスポットに適用するのかという話がもう少し聞きたい問題だった。あるいは思いきり生物学の話をテクストをあげつらって圧倒してほしかったかもしれない。先日ちらっと話を聞いた美術史の模様ももう少しここに入れて考えるとさらに聞きやすさが増したかもしれない。

 とはいえ、美学や芸術学という領野は、私が所属している大学に限らず科学系の言説との折衝を必要とされてきている。創造性などをめぐる議論が、別に美学芸術学の特権でもなく、あるていど同じ語彙を使いながら焦点になり、そこで交渉を重ねることになるのだろう。そうした機会を、所詮文化系はとか所詮理科系はとかという常套句で片づけてしまうのはたしかにもったいない。そういう意味でひとつのテストパターンとして聞くことができた。
 私自身は、おそろしく具体的で歴史的な問題を素材にして科学系研究者の欲求をそそるようなものをたてていこうと思う。パノラマ研究しかり、手研究しかり。