鳥と猿と猫と


松坂、パイナップルみたいである。

■写真雑誌いろいろ
Photographica Vol.04 (エムディエヌ・ムック―インプレスムック) 名作写真館 30 新世代の六人 (小学館アーカイヴスベスト・ライブラリー)
それにしても写真雑誌は多い。左を立ち読みする。右は完結したらしい。全30巻。え、これで終わるのか。。。新世代とそれ以前の間が少し空いているような気もする。
 ちなみにアマゾンにあがっている「雑誌」の「その他・趣味」の項目のうち、「カメラ・写真」は146件。重複があるので20数誌。デジタルもの、身の周り写真ものが少しずつ数が増えているという感じなのかもしれない。しかし、かつての『写真装置』のように、写真批評誌と呼べるものがまったくない。写真を語る言葉の組織。

■鳥と猿と猫と 引き続き初期写真スタジオでの四方山話を読む。
 
 子どもの撮影の苦労話――赤ん坊の撮影に二時間かけた挙句、レンズを赤ん坊に投げつけて法廷に引きずり出された写真師の話。スタジオに来るやいなや子どもを平手打ちしはじめ、理由は赤みがかった顔色にするためなのとのたまった母親の話、禁酒運動家はヘッドレストなくてもブレないのだという逸話。ヘッドレストを拒んだマーガレット・キャメロンのスタジオの世にも怖ろしい様子の話。カメラ後方の壁に掛かった時計の文字盤をぐるぐると見続ければ瞳が大きく写るとかというちょっとした裏技的な話も続く。
 最も面白かった一連の装置や工夫が、この時計などのように、被写体の注意を適度に逸らすための道具。
 そのいち。スタジオに訓練されたカナリアがいて、撮影開始とともに合図でさえずりはじめたという。その余力のないスタジオでは機械仕掛けの鳥がいて、撮影の間中さえずりっぱなしだったそうだ。こういうガジェット一覧も興味を引かれる。
 また猿も活躍したそうだ。被写体がきちんとした位置に構えたかを吟味してカメラのところにもどって布をすっぽりかぶり、手をにゅっとそこから出してレンズのキャップを取る。露光中に被写体を凝視しつつ、やがてレンズをふさぐ。この一連の動作をする猿もいたという。
 猫の剥製というのも道具のひとつだったらしい。犬ではなくなぜ猫なのかが気になる。
 そして撮影の難敵であったハエ。その駆除のためにスタジオに蜘蛛や食虫植物まで育てていたらしい。カメラの内側に蜘蛛の巣。…スタジオが繁盛しているかどうかが分からなくなる。

 比較的長い露光時間のためにいろいろと考案された台座や手すりやヘッドレスト。それ以外にも、こうしたスタジオ内にあったはずの、しかし写真には写りこんでいない注意を適度に逸らした事物。これもまとめて議論できそうな気がしてきた。