写真整形

■整形写真と整形される写真
 写真関係なのでいちおうこの間にあった犯罪容疑者の整形と写真についてもコメントを。
 あちこちで二枚の写真が並べられている。いわゆるbefore/after写真である。19世紀末以来、司法制度のなかで写真の同定的機能が制度化され、再犯者を確認するための媒体として有益なものとされたのが写真であった。同時に、その矯正や改良の証拠として更生後のafter写真なるものもこれと並べられて提示される慣習もできがあった。
 二枚の肖像写真を比較検討するという見方のレトリックは、現在でもエステの広告や整形外科の広告でも用いられている。ビューティーなんとかという番組でもそれは変わらない。照明アングルポーズのコードを微妙に変えつつ、その効果を顕示するためのレトリックである。
 今回の報道で二枚の写真が並べられ、数限りなくその周囲で言葉が紡がれた。何か腑に落ちないまま、何度となく写真を見ていた。腑に落ちなかった、あるいはわからなかったのは、二枚目の写真が整形後の実物写真なのか、それとも整形後を予想した合成写真なのかということだった(ここを参照)。
 調べてみると、二枚目は実物写真からひげなどを取り除いたもの、しかもそれは何度かの整形後の顔であり、さらなる整形前の写真が元となっているということがわかった。つまり、整形前からの予想としての整形後/加工後写真が私たちの目にこれだけ触れていたのである。
 予想外の早期の逮捕でそれ以上整形写真について議論が繰り返されることはなかったのだが、奇妙に思ったのは、合成や加工を経た写真も、きわめてベタに、外示的に読み取られるということ。整形されているのは、顔のみならず写真も、なのであり、写真の加工性はアクセントは弱められる。こういう受容の仕方が、写真の現在の一例なのかもしれない。
ひとまずまとまらないがメモ。
 ちなみに、同定を免れる方法について数々紡がれた言説もほぼ19世紀以来の伝統をなぞったものだった。また、同定に関して警察関係者よりも医師の報告が重きを置かれていることは少し違った。

 ところで女装予想写真もある。それはここ。潜伏先についての言説も検討の余地はある。