研究会
■研究会
昨日は1限から4限の日。終わって研究会。上野成利さんが組織している異分野の交わる研究会。久方ぶりにベンヤミン発表にコメントする。上野さん、とても機転のきく、回転の速いひと。
ただしこの写真は、1930年代に写真メディアがもう一度シャッフルされた時期に出た一連の出版物に掲載されたこと、そしてドイツ国内では顔づくしのイデオロギー的な写真集が数多く出版されていたこと、そうした写真史の事実を補って考えないとならないとも思う。
とはいえアウラがつねに回顧的な、つまりすでに終わったものであるものを後ろ向きに論じる際のある種の形容辞として議論しなければならない、という論もごもっともだった。神学的と非有機的なもののアンチノミーも至極納得。重要なのはそれをツールにして具体的にどう現在その装置を引き継ぐのかということ。
また、アウラにはもう少しアンビバレンツな部分がかなりあり、この概念の有用性は、その部分をくみとらないと、概念の批判的起爆力は還元されてしまいかねないのではないのか――ならばいっそアウラなんぞもうないって言ったほうがよい。そして、後ろ向きの想起の戦略というこうした戦略を、現在において有効に使用するための方法はどうなるのか、そういうことをコメントした。ベンヤミンを想起のアウラで満たす方法ははたして有効なのかどうか、それもある。
記憶想起外傷ではない、ましてやのっぺりした現在性の肯定でもない方法、たとえば先行性記憶喪失を方法論化できないのか、、、とかふと考える。
とはいえ、聴衆は、何を言っているやら、とたぶん途方にくれるぐらいの、ベンヤミン関連情報について意見をやりとりできたのは久々に面白かった。水田さんにも上野さんにも参加者にも感謝。
議論に出てきたひとのひとりヴァイゲルの本も挙げておく。このなかの『ゆがめられた類似性』がベンヤミン論として面白かった覚えがある。英訳もあげておく。グラマトロジーについての著書は早速購入する。
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もうひとりのバック=モースはもう翻訳もいくつか出ているのだが、この二冊、なかなか出ない。
前者はパサージュ論をアーカイヴを精査してマッピングしつつ図版構成も大胆に行った今や基本書。もうひとつはベンヤミンとアドルのの交差点を明瞭に説明した本。
でもこういう情報をあげること自体が、僕は少々懐かしくなってしまうのであった。
■写真のディスクール空間
今日は授業でこれを読み直す。やはりよくできた論文。
これも含めて来年は写真論演習を前期に非常勤でするので、写真論のあれこれをリストアップしている。映画論集成を参考にしながら写真論リーダー本を私家版で作ろうと思う。
それにしてもこの論文でのクラウスの「ヴュー」についての論、もっと縦横無尽に展開した論がまだないのが疑問。それはステレオ写真論2010年度版とか考えてやらなければならないだろう。
書きかけ