シャーカフスキー

■『写真家の目』
 シャーカフスキーの代表的論考をざっと訳している。『写真家の目』を経て『写真を見つめて』、ようやく『鏡と窓』に着手したところ。
彼の文章をよく読むと、いわゆるシャーカフスキー批判の言説が拾っていないノイズが結構散らばっていることに気づく。『写真家の目』には、「有機体」のごとく、「全体として一挙に生まれた」写真が次第に滲みだすようにその可能性を、アマチュア写真家など「匿名の」写真家によって次々と発見されていくプロセスが主張され、あの物自体、ディテイル、フレームなどの諸カテゴリーが同心円状に重なりあい、吸い取り紙に一滴落とされた液体のように次々と遠心的に拡がっていく様子が、写真の歴史の進化とされている。

■フロンティアとしてのアメリカ写真
以下のシンポジウムのシャーカフスキーの論考もざっと読む。
Manfred Willmann ed., Symposion ueber Fotografie / Symposion on Photography
Fotogalerie Im Forum Stadtpark
アメリカ写真とフロンティアの伝統」。F・J・ターナーのフロンティア仮説を引きつつ、アメリカにおける写真を比喩的にフロンティアとして論じる部分が冒頭から延々と続く。絶えず運動を続け、二つの拮抗する力、つまり既存の規範に従う力と、写真メディア自体の潜在性にアナーキスティックに従う力に引き裂かれている無数の写真家たち、このうち後者の力に力点を置かざるを得なかったアメリカ写真の事情が繰り返し語られる。これがいわばフロンティアとしての写真の方向だという主張である。