針30本

 針に行く。都合30本ほどを打ち、針を動かしてもらいながら背中の奥行きを体感する。
 針の痛みというのは多様である。皮膚の痛点にあたる痛みの場合もあれば、筋膜に由来するぴりりと痛い場合もあるし、文字通り深層の筋肉に当たってずしりと痛い場合、神経に接触してしびれる場合、針を抜く際のくっついて引っ張られての痛みの場合、刺したままで針をいじる際の痛みの場合、針をはじく際のぶーんと振動する痛みの場合、数え上げるときりがない。「痛いですか?」と聞かれながら、その痛みを識別し、その深さやこらえきれなさで1本ずつ確認しながら刺していく。一言に痛みの…というが、これほど度合いや質の異なる痛さを体感するというのはまずありえない。