自然の鉛筆論 その7

photographology2004-12-04

■自然の鉛筆《植物の葉》
 第二巻の二枚目、通しで7枚目《植物の葉》

 ここにつけられているテクスト。
 これまで呈示してきた写真は、カメラオブスクラから距離を置いた対象の表象であった。これに対してこの図版は、対象がもつサイズをそのままあらわしている。その方法とは、感光性のある紙の上に葉をのせ、さらにその上にガラスをかぶせて圧力をかける。日の光にあたった部分が黒い色になるまで数分間太陽の下に置き、薄暗い場所に移動して葉を取り除くと刻印ないしは像が残されることになる。葉の透明度により白から薄茶色までの色合いになる。ただしこの図版はネガイメージではなくポジイメージになっている。その方法は、最初のプロセスを反復すればよい。黒地に白の像が刻印された紙をさらに第二の感光紙のうえに置いて再び日の光の下に置けばよいのである。
 カメラを用いない実験的撮影方法とその結果としての図版。『自然の鉛筆』のなかでは言葉と像の関係が密接な図版のひとつである。植物の葉については図版22のレースの写真でも繰り返し言及が行われている。カメラなしであること、サイズがそのままであること、反復的作業によって図と地が反転すること等が見逃せない点である。
 写真というものが文字通り実物との接触によって痕跡を残す――実物大の強調は重要である――とともに、反復的作業によって反転を繰り返す過程であるという2つの強調点がここにはある。

 ここで個人的に興味深いのは、カメラなしの葉の写真の外観である。何よりもこれは紙に挟んで圧した植物標本と見かけが酷似している。あるいは、アームストロングによれば植物学においては、葉の刻印を金属に移してプリントする方法もあったという。写真と印刷との接触点は、もう少しうがつ必要がある。

■書籍
ジョー・スペンスの自伝が出る。『私、階級、家族―ジョー・スペンス自伝的写真』(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883850692/qid%3D1102131609/249-3387656-0138732)。

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