写真集という言葉

 写真集という言葉は考えてみると奇妙である。
 英語でこれに該当する言葉は何だろうか。「世界初の写真集」とか「最新の写真集」とよく口にされるが、写真集という言葉はおそらく英語ではフォトグラフィ・ブックというのであろう。少なくともアマゾンなどではそうカテゴリー化されている。印画紙というのは写真の多様な現象形態のうちのひとつでしかない。フィルムが投影される場合もあれば、金属板に焼き付けられる場合もあれば、ランプの傘や枕などの布地に、陶器に刻印される場合もある。紙という選択肢だけでも、現象形態は多様である。そしてようやくページという面に収まるようなオプションに行き着き、複数の写真を本の形態にまとめた写真集なるものが編まれることになる。
 しかし、展覧会カタログやカタログ・レゾネ的なものは写真集なのだろうか。フォト・エッセイはどうなのか。フォト・ロマンは…。写真集の定義は案外難しい。テクストが挿入されていてもそれが写真家の言葉によるものであれば写真集なのだろうか。編集主体の問題なのだろうか。
 さらに考えれば、写真集は、単一の主体が撮影したものを本の体裁にまとめたものというわけでもない。逆に同じ被写体を対象にした複数の撮影者による写真集も存在するからである。
 こう考えてみると、案外写真集というものが厄介なテーマであることがわかってくる。もちろん単一の主体が製作から編集にいたるまでを主に統御した写真を中心とした本の体裁をした集成、それが写真集だという前提は十分にわかって入るのだが。
 このテーマ、進展があればさらに書き継ぐことにする。