自然の鉛筆論 その9

photographology2004-12-07

立ち講義3本の日。リテラシーの話からレトリックの話へ。午後映画大会をして会議2本。

■《古い印刷物の複写》
 8枚目の図版と9枚目の図版、そのつながりは一目瞭然であるし、さらには7枚目と9枚目のつながりも同様である。

 この図版についたテクストは簡潔である。
 トルボットの書斎にある本から撮影された図版であり、古物研究者にとってこうした写真芸術の用法は大きな利点になるように思われる。ページと感光紙を重ねあわせる方法によってオリジナルのサイズがコピーされている。

 実に簡潔である。簡潔だが、重要なテクストである。

この写真は、7枚目とは、直接的な印画による実物大の像という記述によって結びつき、8枚目とは、本によって結びつく。なおかつ9枚目が、重ねあわせをもう一度反復している点も見逃すことはできない。7枚目と8枚目が絡み合った写真、それが9枚目の写真なのである。たしかにもうテクストをあれこれ付け加える必要もないほどに思える。
 なぜなら、入れ子の議論の被写体(書物)であったもののさらに一部を、カメラなしの重ね合わせの手法の反復で製作し、そうして出来上がったページ=写真を書物にさらに貼り付ける、こうしたきわめて複雑な屈折と反射点がここでは形成されているからである。
 トルボット以後始まった書物への写真図版の侵入という点から考えても、これは倒錯した例になるだろう。何しろ侵入する図版がよりにもよって書物のページなのであるから。しかも、それがある種の印刷に似た手法で製作されているということも見逃せない。実は、この図版はめまいがするほどのややこしさなのである。

 以上、今日は短めのメモ。