業務日誌

■業務日誌

 朝6時起きの3コマの日。
 午前2コマ。漫画論の系譜を紹介して視覚的快楽の話へ滑っていく。…にしても教養の授業を行っている教室は映像設備がすこぶる悪い。スクリーンサイズが小さく、おまけに3色分割のプロジェクタ仕様の200人教室。一般的にありえない教室である。でもそれが比較的新しい教室だと聞かされている。これも大学側のリテラシーの問題だと思う。文学部の方は学生がけっこう直裁に反応を返すようになったのでひと安心というところ。
 午後1コマ。
 ようやくトルボット論。シャーフのまとめをなぞって問題を提起して終了。カメラ・ルシーダの夢幻的な映像――プリズムによって目の前の光景と手元の紙が網膜で重なり合う――が消え去るのを引き止めて固定する、そうした欲求の在り処について、あの格子窓の一枚一枚の歪みで屈折された光がレイコックの邸宅のサウス・ギャラリーの狭まった空間でどのように散っていたのかについて、同邸宅のエントランス・ホールの上方のディオゲネス像への光の差し込み方について、トルボットがネガで当初は充足していたことについて、あれこれ喋る。
 望むらくは、紙の厚みの中に散った塩化銀の顕微鏡写真が欲しいところ。銀の粒子の大小がフォトジェニック・ドローイングとカロタイプでは異なることとか、ヘンネマンがレディングで使用した写真を複製する際の水の純度とか、そうした物質的な情報も欲しい。欲を出せばきりがないのだが。

 シャーフの金字塔『Out of the Shadows』をようやく借り出す。

■セールスの様式
 合間に小学館のセールスが来る。前回の人が新たな人に交代していたものの、相手の意向を構わない売り込み方は変わらない。どうやら様式化されている。先生のご専門に合わせてと言って辞書の売込みをする。いやいや違うと否定する間すら与えてくれない。買わないって。