箒の位置

 
 箒写真と言っても何のことか分からないだろうから、図版を挙げる。
 以前もここで言及したがトルボット『自然の鉛筆』の写真のなかでも最も有名なものが《開いた戸》(上の写真)である。テクストなどの詳細については過去のステレオダイアリに書いたので省略する。
 この箒写真、実はさまざまなヴァージョンが存在する。例えば、次の写真1では箒が右にたてかけられており、
 
写真2でもそれは変わらない。右手に格子窓が見える。
 
写真3では右側の格子窓全体も入り込むフレーミングになっている。
 
 シャーフの本からスキャンしたものだが、さらにはこの建物全体を撮影する様子を撮影した写真が次の写真4である。
 
これは、ネガであったものを反転させたものである。その部分を拡大すると、写真5のようになる。よく見てみよう入り口に立てかけられた箒、その手前にカメラが位置しているのがうっすらと見える。
 美術史的に構図の観点から考えてみることもできる。例えば、敷居のところで下部を切り、左右の壁を窓を除き、こうしてより大胆な切り取りを行ったとか、しかも戸口で視線の侵入を塞いでいた箒を左に立てかけることでよりスムーズな誘導が行えるように配慮したとか、光と影の対比をより強く描出しようとしたとか、右上方のランタンの有無によるアクセントとか、指摘することができるだろう。

つづく