海の手前で海を見ること

photographology2006-05-21

■コレクション

河合さんの作品が届く。これで三つ。確実に増殖している。今回加わったのは空を擬態した存在物。

■パノラマ報告作成

 ハーグの地図とスヘヴェニンヘンの歴史を諸々調べる。
 ハーグの海岸リゾート地をこともあろうにその数キロ南の市内の中心にパノラマとして描くこと、いったいそんなこと――当時のパノラマ投資熱を考えれば収益を見込めないことは明らかである――がどうして可能だったかについて各説をまとめる。芸術家メスダハが自身の画業を顕示したかったからという後づけされた説はとりあえず否定する。
 もっとも説得力のある説は、小規模なパノラマ会社では一度に一枚のパノラマ画しか制作できない、それゆえそうしたパノラマ子会社がネットワークを組み、相互にカンヴァスを入れ替えることで財政的なリスクを回避し、迅速に資本を回収しようとした試み、これが主題の選択の理由である、こんな説である。
 ドイツやフランスやイギリスにわずかに遅れたおかげで、1880年代以降にはベルギーのパノラマ会社がパノラマ・ブーム、パノラマへの投資熱を煽ることになった。しかしメスダハのパノラマは、そうした流れの中で生じたが、妙にそこから浮いてしまうパノラマでもある。先に論じたインスブルックのパノラマやアルトエッティングと同様に、澱や滞留に位置するパノラマがこのパノラマである。


■絵はがきの間
 細馬さんが『絵はがきの時代』を出されたよう。早めに買っておこう。絵はがき道には手をつけはじめる気力も体力も今はないので研究対象からははずしている。しかし、ステレオ写真とパノラマ絵画/写真の間を緩やかにつなぐメディウムである。