ローマの休日カメラ

ローマの休日カメラ
ローマの休日 製作50周年記念 デジタル・ニューマスター版 (初回生産限定版) [DVD]  
探偵カメラもの映画(1953)。10年ぶりくらいの久々通し見する。
この映画で登場する偽装カメラはライター型のエコー8。
カメラは全部で三種類登場する。最初は煙草をすすめる際、次はドライブの際、そして船上パーティーの際の三度。視線の逸らし方の三種類を見てとることができる。最後に記者会見の際にすべて種明かしをするシーンがある。他に、現像できた写真を見返すシーン、新聞の報道写真など、やはりこれも道具立てとして写真が重要な小道具となった映画。

■ものカメラ論8――タンブラー、赤ん坊、帽子
 まだまだ出てくる偽装カメラ。細かな用法やその身体的所作を追いかけている。
 例えば、ブランデーのソーダ割り用グラスカメラというのがある。何でもタンブラーの底が二重底になってそこにレンズと感光板などが内蔵されている。撮影のときにはグラスにお酒を注ぎ、飲みながらアングルを調整して撮影する。グラスの底に顔が見える的な偽装カメラ。
 さらにこういうエピソード。
 あるときフランスの軍事施設の外で、赤ん坊ののった乳母車を互いに押し付けあう若い夫婦がいた。不審に思って当局が尋問してみると、赤ん坊と思われたものは人形型カメラであり、彼らの不審な動作は施設を探るための撮影行為だったという。これは揺りかごを揺らす手による隠し撮り行為。

 そして三つ目の話が、あまり注目されていないが重要な帽子カメラ。紳士の国イギリス、一定の階層ならば誰もが着用し、その内には持ち主が分かるように写真が取り付けられていたアイテム、その型をしたカメラがすでに19世紀半ばには発明されている。おそらく写真史ではそれほど強調されないが、これが最も人気のあったカメラであった。
 80年代の新型帽子カメラ、その仕組みはてっぺんに穴があいており、ここからレンズが覗き、撮影の際には帽子を取って胸の前で撮影をする(あるいは杖を三脚にして固定して撮影する)ものだった。蝋をよく滲みこませた紙などでブリムを覆うと帽子は一種の暗室になる。帽子が一般的な必須アイテムだったからこその偽装カメラ。図はこれ。

帽子をとって直立するという恭しい動作が実は隠し撮り行為だということ。これは既出だが反復しておく。