指輪写真



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■彫刻写真
1851年ロンドン万博が開催された年、アントワーヌ・クローデ――フランス出身の写真家、当時ロンドンに写真館を開業していた――は博覧会の模様を撮影し、自身のスタジオで展示を行う。この写真についてある記者は次のように語っている。
それは、巨大な建造物、そこに集められた宝としての芸術作品、そうしたものがすべて圧倒的に迫ってきて、想像力よりはむしろ感覚による走査が必要になる写真だ。あるいは、完全な「立体性」をともなって、「明瞭」なしかたで彫刻が「そこにある」かのようである。
 これは言うまでもなくステレオ写真のことであった。水晶宮のなかに集められた彫刻の写真を立体視してみれば、こうした反応がより具体的に理解できるだろう。しかし、別のところでは次のような意見まで述べられるのである。私たちは「対象そのものを見る代わりに」それを見ている、いや、立体写真の明瞭性は現実の事物を凌駕してさえいる、なぜなら博覧会場の内部空間をこのようにすみずみまで明瞭に見渡したものはいなかったからだ、。
 一方で写真が、――カロタイプのような肌理や諧調よりも――その透明性によって受容され、他方でその立体性、その立体性にともなう異常な明瞭さが、写真の帯びる特徴になる。ステレオ写真こそが50年代からの写真の受容方法を決定づけた。その代表的な例が水晶宮に居並ぶ彫刻群の視覚なのである。

つづく。