憑依されたメディア6


■エアマウス
こんなものが発売されていた。授業中にワイヤレスマイクつけ、右手にこのマウス、左手にビデオリモコンを握って動けば、踊るゲームをしているひとみたいかもしれない。
もしくは、テルミンみたいにならないか。
…と思い、買い物リストに入れておく。


■憑依されたメディア
(ラジオの章の続き)
・SF、アンテナ、テルミン
 話は『ロボットモンスター』なる映画(1953)から始まる。この低予算映画の悪評のゆえんは、その単純な筋にではなく、むしろゴリラの着ぐるみに深海潜水用のヘルメットを被せただけのエイリアンの表現にあった。おまけにエイリアン特有の表現としてウサギの耳のごとき2本のアンテナがつけてある。丁寧なチープさである。
 つまり、こういうことだ
 もちろん重要なのは、エイリアンを表す典型的表現に、受信用アンテナがついていたということである。大気中の信号を受信するアンテナは必須アイテムだった。

 他方、1927年、ニューヨークでアメリカでは初のテルミンの演奏会が開催される。この、世界初の電気的楽器は、このような形状をしている。2本のアンテナに触れるか触れないかの距離で両手をかざしたテルミン演奏の模様は、あたかも大気中の信号を受信しているかのごとき印象を呼び起こした――彼の演奏した曲目には「エーテルの音楽」がある。電気的現前に歌わせるアンテナつきのテルミンは、ラジオの従兄弟的存在だったのである。

 しかし正確には、両者の結びつきは、テルミン熱が収まった後にある。テルミンはハリウッド映画に所在を移し、ミュージカル映画の音楽や特殊効果音に使用されることになる。とくに1940年代から50年代のSF映画でそれは大活躍する。テルミンは超常的なものの存在を電気的現前として表現する道具になったのである。例えば、これこれが典型例なのだそうだ。テルミンの音とともに登場し、非人間的に火星政府当局の通信を遵守する宇宙人たち、つまり火星人、アンテナ、テルミンの結びつきは、昨日の欄で論じたメディア環境への不安を否認し、置換したものにすぎない。

 これが3章の概要。
 しかしこうした不安は、これとは別の不気味なメディア的現前との遭遇の際にさらに深刻なものとなる。つまりTVメディアの問題である。
 ようやく視覚の話に入る。
(つづく)