クリュル、ストーン


もう一本ホラー。

■写真小史の参照にした小史
 ベンヤミンが『写真小史』を書いたときに読んでいたと思われる本を何冊か読んでいる。
 たとえば、以前も挙げたボッセルト&グットマン『写真の初期から』(1930)、そしてマティース=マズーレン『芸術写真』(1907)がある。彼は、Pariser Brief 2のなかの「写真と絵画」の章でも前者を引用して『写真小史』と同じ趣旨の議論を行っている。また、リヒトヴァルクの言葉の何箇所にもわたる引用はマティース=マズーレンの書からの引用である。この2冊は19世紀写真に関して、――批判はするものの――ベンヤミンの依拠する文献であり、しかも両者ともにヒルの写真が満載である。
 『写真小史』の前半に、奇妙にもヒル話が多いのはおそらくここに原因がある。そこでこの時期(1907年、1930年)のドイツの写真動向の言説をおさえるためにざっと目を通してみた。いわゆる「芸術としての写真」の言説がどのように立ち上がったのかということが簡潔に述べられている内容。

■クリュル、ストーン
 ついでに、クリュルやサーシャ・ストーンについても調べてみる。
 『一方通行路』の表紙でも有名なストーンについて。今年にかけて展覧会がベルリンで開催されたようだ(「イメージのなかのベルリン」)。ここを参照。『イメージのなかのベルリン』は職場にあった。展覧会自体はすでに行方不明になったと考えられていたその写真が数多く収集されている展覧会。文献はこれまたこの展覧会もつい最近まで行われ、先の都市の写真にもうひとつのイメージが重ねられた写真の作例を見ることができる。そして、ベンヤミン・アルヒーフに所蔵されているストーンの撮影した写真3枚は、屋外を被写体としたものではなく、いかにもパサージュ論で言及されそうなこてこてした市民の室内の様子を撮影したものが多い。

 パサージュの写真でも知られるジェルメーヌ・クリュルに関しては、数冊のみ参考文献がある。

Germaine Krull: Photographer of Modernity (MIT Press)

Germaine Krull: Photographer of Modernity (MIT Press)

MoMAでの展覧会もウェブにあがっている。

それにしても収穫が少なし。