ホラー研究本


■講読用
後期の講読用にざっと読み進める。エルセサー等の本は最後の二章。
学部はグラントのジャンル論入門的な本にした。
Studying Contemporary American Film: A Guide to Movie Analysis Film Genre: From Iconography to Ideology (Short Cuts)

■Jホラー本

Nightmare Japan: Contemporary Japanese Horror Cinema (Contemporary Cinema)

Nightmare Japan: Contemporary Japanese Horror Cinema (Contemporary Cinema)

ようやく出たJホラーの英語での研究書。他にも同様のタイトルはあるが、ほとんどストーリーを紹介しただけのものばかりであった。映像の分析が十分なされているかは不明だが、注文。他にはコメントにもあったように園子温、ヒグチンスキー、黒沢清中田秀夫清水崇佐藤寿保らの作品が論じられているようである。

Recreational Terror: Women and the Pleasures of Horror Film Viewing (Suny Series, Interruptions - Border Testimony(Ies) and Critical Discourse/s)
以前挙げたこの本もざっと読み進める。副題は「女性と、ホラー映画鑑賞の快楽」。1950年代までのモダンホラーと60年代以降のポストモダンホラーをフェミニズム的観点も織り込みながら論じた簡潔な本。
 第二章「性的死(Wet Death)のスペクタクル」冒頭にいくつかのフレーミング上の工夫が挙げられている。たとえば、誰のものかはっきりとわからないショットとして次の三つが挙げられる。
 1 オフフレームにモンスター的存在の視点からのその息遣いの聞こえるトラッキングショット、2 あるいは同様の視点ショットにおいて怪物的存在の一部が不明瞭に示されたショット、3 さらに動いているか固定されているかにかかわらず、物語の進展の中でふとした時に前後の必然性もそれほどなしに挿入される、窓越しやドア越しやそのほか数々のフレーム越しに覗き見るかのようなショット。そしてこの3つと、恐怖にゆがむ顔をした被害者のリアクションのショットが組み合わされる云々。
 Jホラーに関して言えば、リアクションは抑制的であり、1,2は『呪怨』の霊肩越しショットぐらいしかない。3についても、さしてJホラー特有とは言えないだろう。むしろ「霊のうごめく家」などのロングショットは、霊からのショットというよりも、いくつかの視点が重なったショットに思える。これはまた。

 第一章はまた明日に。
 ちなみに、後半はサブタイトルから分かるように、なぜ女性の身体を切り裂き、断片化する映画を女性が見て快楽を覚えるのかという問題を掘り下げていくようである。ともあれ、ポストモダン的ホラーの事例をマニア的ではない語り方で、これまでのホラー映画論への参照や批判も加味して展開していく基本的な本。抜群の面白さはないが、その点で参照すべき本。