昼食を作り直す

ようやく帰国…メールやブログのコメントも含めて、ちょっと一息つかせてというのが第一声。少なくとも水曜までは諸々雑用が息継ぎなしにある。

 パリの情報は別送の30冊ぐらいの本が届いてからぼつぼつ紹介するとして、まずはできるものから。
 オルセのピカソ展。これは、あのマネの『草上の昼食』をピカソが数限りなく描きなおした作品がコンパクトにまとまって展示されていた展覧会。先日のご飯の時にも話題にしていたが、別の美術館では大規模なピカソ展もやっているし、同時に世界各国でもたぶん無数にピカソ展が開催されている――ピカソ、どんだけあんねんという印象もある――。それはさておき。。。
 マネのこの作品のピカソによるいくつものバージョンを見ていると、この作品をステレオ作品化したものを見るとよくわかるあの気持ち悪さが、彼のこの執拗な試みの源泉になっているのではないかと推測したくなる。この試みの中で、ピカソは最後には絵ばかりでなく人物のみ紙で作成しそれを立体構成してまでいる。マネの作品は、複製で見るよりも奥が妙に明るく視線を始終落ち着かなくさせるし、そもそもそうした絵全体を構成する幾層ものレイヤーが点在する裸体を分割し、両方の要素が相まって欲望がぎこちなく分断接続される。それは美術史的解説の古典的な構図や流通していた図像イメージには落ち着かない強烈な部分になっている。ピカソはそれを繋ぎなおそうとしたかのように思える。

 同じ美術館で開催されていた仮面展もこぶりなわりにはよい展覧会。バルザックの彫刻作成のためにロダンが作成したデスマスクのような秀作、各作家のデスマスク、舞踊や演劇に使用された仮面の作品化など、19世紀末の写真と仮面という表象が拮抗している様子がなんとなく見て取れる。また、同じくパステル画展はほどほどしか見なかったが、パステルが形象の輪郭を浮き上がらせたり、紙に反射して戻ってくる光を効果とさせたり、一口にパステルといってもその明度の使い方が多様だということが分かる。
 ところでオルセの本屋からは以前はあった写真関係の本がごっそりなくなっていた。
 今回まわった本屋の中では、シャンブル・クレール(サン・シュルピスの写真書専門店)やポンピドゥ以外、市立美術館の本屋、ジュ・ド・ポームの本屋さんがまとまって本を置いていた。写真センターはいまひとつだし、オルセもこんな有様。