裁判、マンガ


■評議の記号論
裁判員制度と法心理学法と心理〈2006年 第5巻第1号〉特集 裁判員制度―制度の成立過程と法学的・心理学的検討課題
昨日も挙げた前者を読みはじめる。後者もついでに取り寄せたので読む。
前者の、評議段階の章をざざっと読む。
 藤田氏「「論点主導型」」
 伊藤氏「裁判員の判断に対する感情的要因の影響」
 堀田氏「評議についての計量言語学的分析」
 大坪氏「集団意思決定研究から裁判員評議メカニズムを考える」

 最初の論。陪審評議についての社会心理学研究では、評議の進行について次の二つのスタイルが指摘されてきた。ストーリー設定があり事実と論点の結びつきを重点化する「証拠主導型」と結論から始まり証拠との間を行き来する「評決主導型」である。ところが、模擬裁判において、これとは異なる「論点主導型」という評議の型があるという。その第三の型についての問題点と解決策が提示された議論。たとえば、結論が突然の印象を与えるという問題点、ストーリーモデルやフローチャートの利用などの解決策がそれに当たる。
 二番目の議論は、タイトルの通り。指摘としては、写真の提示による心的ストレスの増大、有罪無罪の判断との相関、有罪という前提のもとでの量刑判断との関係という論点、感情的証言でなおかつ証拠としての不採用のものが判断にむしろ影響を与えること、さらに認知欲求の高低により本質的ではない要因からの影響が増えるという分析などが提示されていた。
 三番目は昨日挙げた著書と同じであるため省略。
 四番目は職場の同僚の論。個人レベルでの判断のバイアス(メディアの報道などによる)が集団ではさほど顕著にならないということ、ただし個人レベルの判断が有罪無罪の判断に割れるケースではその限りではないこと、とはいえそうした事例はごく少数であるので問題はないこと、さらには裁判員制度では別に裁判員の参加により決定が不安定になることはなく、決定は安定化するにきまっていること、むしろ焦点となる問題は量刑判断にあること、そして裁判官の役割が未知数であるが従来とは異なる複雑な役割を期待されること、、、などが簡潔に説明されていた。

 法律関係、心理学関係はまったく今回はじめて読んでいるので読むべきことが多い。さらに量刑判断、事実認定についての議論を明日は読み進めることにした。『法と心理』はその機会に。
 まったく関係ないけれど、ゼミなどの議論のさせかたなどにも使えそうなアイディアがいくつかあるのが思わぬ収穫かもしれない。

■裁判マンガ
もあれこれ出ているので、取り寄せた。もちろん、裁判員制度を分かりやすく説明する入門マンガと、もうすこしストーリー性に富んだものの二種類。
あなたも裁判員―漫画で読む裁判員制度みんなの裁判―マンガでわかる裁判員制度と重要判例60 サマヨイザクラ裁判員制度の光と闇 上 (アクションコミックス)裁判長!ここは懲役4年でどうすか 1 (BUNCH COMICS)