ゲーム論

The Medium of the Video Game
ようやく時間ができたので読みはじめる。
 序論は、なぜヴィデオゲームの学問的研究がなされてこなかったのか。相互貫入しあうゲームメディアと他のメディアの状況を顧みれば、また美的メディウムとしてのゲームの認知の開始を考えれば、必ずしも技術的、経済的視点ばかりではないゲーム研究を立ち上げる必要性がある。ゲーム研究は、その参照点に既存の映画研究やTV研究をするが、さらに従来の運動映像の理論に、新たな概念――インターフェース、プレイヤーのアクション、インタラクティヴィティ、ナヴィゲーション、アルゴリスム的構造など――を追加することになる。(逆にいえば、映画やTVを含む映像メディアについての思考はこうした観点を補うことで、拡張することもできる。映画研究でも構造にヴィデオゲーム的構造を取り込んだとしか言いようがない映画を討究しているものも散見される。)
 第二部「ヴィデオゲームの形式的諸側面」は空間、時間、物語、ジャンルの観点からヴィデオゲームを分類する各章から構成されている。
2・1「ヴィデオゲームにおける空間」:
 映画の空間、とくにオフスクリーンの空間とヴィデオゲームのそれとが区別され、ヴィデオゲームの空間構造を決定している技術的、美的要因が簡単に言及された後、ヴィデオゲームの空間構造の11のタイプが分類される。
1 テクストのみに基づく非空間型
2 ワン・スクリーンによる全包括型
(例はPONG,スペースインベーダーブロック崩し
初期映画との比較がなされている。
3 ワン・スクリーンにラップアラウンドが追加されたもの。
(例 コンピューター・スペース、アステロイド、コンバット、パックマン
4 スクロール (軸はひとつ)
 オフスクリーン空間の重要性はゲームによってさまざまである。プレイヤーが移動していく先の空間がスクロールによって順次展開されるが、これがプレイヤーによる次なるオンスクリーンへの予期を生み出す。また水平スクロールと垂直スクロールの二種が考えられるが(前者にはディフェンダー、スタンピード、スペースジョッキーがあり、後者にはスキーイング、ストリートレーサーがある)、変わり種としてキーストーン・ケイパーズがある。これはデパートの3階分の空間が描出され、水平スクロールによって各階の端から端まで移動し、上下運動はエレベーターやエスカレーターによって行うというもの。ここでも映画との比較が挿入されている。オフスクリーン空間をトラッキング(やクレーンショット)、パン(やティルト)で提示する映画的方法は、フレーム内の運動する登場人物をスクリーン上に保持し、アクションを追い続ける。ヴィデオゲームがこのオフスクリーンの呈示と異なるのは、カメラではなく空間が運動させられる点にあるという。