ゲーム時間の分類

■ゲーム時間の分類
演劇よりも映画よりも長い時間を要することが多いゲームの時間、それを考察するためにウォルフはまず静止と運動という概念を検討する。
 運動が知覚されない状態を静止と私たちは見なす。過去のメディアを例に挙げれば、絵画や彫刻や写真がそうした静止メディアということができる。映像メディアの静止には次の3つを考えることができる。
(1)写真スライド
(2)映画のフリーズフレーム
(3)スチルショット
(1)については説明は必要ないだろう。(2)の場合は同じ静止像が複製されて上映されるという意味での静止であり、(3)のショット内の対象が動いていないという意味でのショットとは区別される。静止(と運動)は(1)の場合はメディアのレベルで、(2)と(3)ではイメージのレベルで、(3)と通常の運動する対象を収めたショットとではイメージ内容のレベルで生じていると考えることもできる。
 それではヴィデオのイメージは既存の映像メディアとどのような差異があるのか。まずヴィデオにおいては(2)と(3)の区別はつきにくい。ピクセルの僅かな差異や変化によって、それが反復的なイメージなのか流れているイメージなのかの区別はようやくつく。
 さらにヴィデオゲームやコンピュータ画面ではどうか。ここでは個々のピクセルの色は精確に反復されているため、一面ではフリーズフレームに近いが、変化が看取されないので写真スライドに近いとも言うことができる。
 しかし、静止させられたヴィデオゲーム画面にはつねに運動のポテンシャルが前提にされている。そのことを示唆すべくポーズさせた画面はその表示が提示され、何もアクションが試みられていない画面との区別が分かるようになっている。また、プレイされていないゲーム画面(アーケードゲーム)はそれと分かるように何らかのデモンストレーション画面がたえず反復されるようになっている。

(時間もないのであとはざっくりと見出しのみを拾っておきます)
 この後、ゲーム特異的な時間性として反復と循環的、ループ的時間が挙げられ、他のメディウムとの差異が強調される。さらには「インタールード(幕間)とタイトル・シークエンス」という観点から、こうした要素がゲームの物語を前進させる場合が多いことが指摘される。
 さらには「ゲームの時間とリアルタイム」という項目のもと、プレイヤーのスキルに比例してゲームの時間に関する統御力が増大すること、プレイヤー=キャラクターとプレイヤーの時間の双方の緊密な相関性、ゲームが設定するキャラクターの速度とプレイヤーの速度との、後者のスキルの少なさによる衝突などが説明され、ゲームが複数の速度を混合した世界であることが結論として導き出されている。
 ウォルフの比較例としての映画の物語を引き合いにだせば、ゲームに想定されているストーリーの時間、ゲーム内に選択されたプロットの時間、ゲームをプレイする時間という3種類の時間は想定できる。しかしこの第三の時間の要素が第二の時間の要素と時に密接に関係し、時に対立しながら、さらにはリプレイする時間がふたたび生じてきて、というようにゲームの時間は映画に比していささか複雑になる。
 もちろんここにはその他の要素も加味されて考察は進められている。ゲームのメディウムの違いによる時差の問題も合わせて考えられている。ネットでのゲームの通信速度の問題、アーケードゲームの反復的時間、あるいはゲームの種類による時間の長さと短さ、ポーズ機能とセーヴ機能なども列挙される。
 最後には、ゲーム画面内に頻繁に設定されるタイマーについてが話題になり、迅速な反射的反応、時間的プレッシャーの有無、加算的減算的タイマーの差異、タイマーの時間の増加や現象(アクションと連動する時間性)などが列挙される。
 以上がゲームの時間の章の大まかな見取り図。