キャロル、ヒルズ


 キャロルのホラー論へのマット・ヒルズの批判を整理している。キャロル的モンスターの組み入れられない事例の問題。アート・ホラーという感情が組み込めない情動(アート・ドレッド)の問題、これと結びついて対象志向の恐怖に照準しすぎる点(対象の不明瞭な場合の恐怖や不安の問題)、そして感情が最初から認識的要素を組み込まれてしまう点、設定される観客モデルがあまりにも単純である点(嫌悪と快楽の共存/両者の統合)などなど。
 これに対して、ヒルズはキャロルを補う形で感情と情動の理論を展開しようとする。ただし、ドゥルーズ系の議論もポスト構造主義の議論も採用しないという。ということなのだが、第一部第一章「ホラーの哲学」はいまひとつ盛り上がりに欠けた。で、ついでに第一部第三章「ホラーの精神分析」の精神分析的議論への批判も読む。。。これも落とし所はいまひとつ。次は第二部「ファンの実践におけるホラーの快楽」を読み進める。攻めはよいのだがそのあとがないのが難。だが、フリーランドなどと並べてまとめておくと意味はあるだろう。